2028年ISDNサービス終了と設備担当者の注意点
2028年12月末にISDN回線のサービス終了
2024年3月にNTT東西は、ISDN回線の外線電話回線のサービス終了を告知しました。
少しややこしいのは、ISDN回線サービスの「INSネットデジタル通信モード」が2024年1月に終了しています。
こちらはEDIと呼ばれる電子商取引システム等に使用されている通信用のサービスであり、外線通話はサービス終了の2028年まで引き続き利用できます。
根拠のない売り込み手口に注意
現在ISDN回線を外線通話やFAXに利用している企業・団体では、2028年末までに通話回線の更新が必要です。
しかしISDNのような多くのユーザーが利用している、または利用していたサービス終了の時期には様々な事業者の思惑から怪しげな情報が飛び交い、担当者の頭を悩ませます。
・通話呼数や長距離電話頻度、頻度を根拠にしなければ本来は試算できないのに、勝手な仮説シュミレション表を使い「通話料金が一律で安くなります」と誘う方法
・電話工事会社でもないのに、現物の設備を調査するわけでもなく「回線切り替の工事見積を提案します」といった何の根拠も持たず見積金額を一人歩きさせて悩ませる方法
など、こうした内容や根拠の無いセールストークに悩まれているお客様を多く目にいたします。
光電話回線の販売業者の多くはNTTやソフトバンクの代理店であり、本来必要の無い場合でもインセンティブを獲得するために新たに光回線を導入させようとすることがあります。
ネット回線で既にひかり回線を利用しているのであれば、電話用に兼用して使うことができるので、新たに光回線を導入する必要はありません。
また販売会社や工事会社を介してのコラボ回線の導入は、後々契約の見直しが必要となった際に通信キャリアとの間に入って調整してもらわなくてはならなくなるため注意が必要です。
NTTやKDDI、ソフトバンクと言った大手通信キャリアからサービスを直接購入する方が、将来の移転や番号変更などに融通がきくので販売店を介さずにお導入する方がおすすめです。
現状確認と、電話番号をそのまま利用できるのか確認を
急ぎ光回線へ乗り換える必要あり等との提案が、設備工事業者から出ている事と思います。
様々な提案を検討する上でも、最も大切なのは現在使っている電話番号を継続して使うことができるかを確認する事です。
現在の回線契約がISDNなのかを確認する方法は3つあります。
1.料金明細から確認する
料金の請求明細「ご請求のお知らせ欄」の料金内訳名の「INS通話料」が払われているか確認してください。
表記記載があればISDNの通話を利用していることになります。
NTTの場合、契約商品名は「INSネット64」「INSネット64ライト」「INSネット1500」と種類があるのであわせてご確認ください。
2.設備から確認する
こちらはある程度知識のある設備ご担当者様向けの方法です。
INSネット用のモジュラージャックからTA(ターミナルアダプター)のLINEポートに接続されているか、同じくTAのアナログポートからFAXやアナログ電話機に向けて電話線が接続されているか確認してください。
接続されているようであれば使用中である可能性が高いです。
PBXもしくは電話主装置を利用されている場合には、ISDN用DSU装置から電話主装置PBXに接続されているケースもありますのでご注意ください。
3.通信キャリアに確認する
サービスダイヤル”116”に電話して電話番号を照会してもらい、利用している回線を確認してください。
116番にかけると、契約中の通信キャリアに自動的につながります。
電話番号の変更が必要なケース、不要なケース
使用している回線がISDN回線であることが確認できた場合、光回線に変更した後も電話番号が同番号で移行できるか確認しましょう。
ISDN回線の契約キャリアと新規導入する光回線のキャリアが異なって確認がしにくい事があります。また、ソフトバンクやNTT116に連絡しても解決できない場合があります。
払出番号
NTT回線のISDNからNTTの光回線に変更する場合は、116に確認する事で変更可能か否かの判断がつきます。
この場合、同番号で移行できることが多い様です。
また、ソフトバンク回線のISDNからNTTの光回線に変更する場合は、元々のISDN回線電話番号がNTTから払い出されている電話番号であれば、NTTの光回線に変更する事は可能です。
しかし、始めからソフトバンクの回線でソフトバンクから払い出されている電話番号の場合には、ソフトバンクの光回線を使用する場合に限り同番号移行できるようです。
要は通信会社の払出番号に依存していて、通信会社の異なる回線切り替えをすることは難しくなっているので、複数の通信会社を一本にまとめる場合には細心の注意が必要です。
更に複雑な事に、現在はISDNサービスを行っていないKDDI由来の電話番号もあります。
複雑な手続きになる場合にはご相談ください。同番号での移行を含めて手段を検討させていただきます。
コラボ回線
ドコモ光コラボに代表される回線で、NTT東西の回線を利用してドコモなど他の事業者がサービスを追加して販売している回線を「コラボ回線」と呼びます。ドコモに限らずコラボ回線は多くの通信会社で販売しています。
問題になるのは、通信料金の代行徴収によりNTTが料金請求している通信契約です。
電話料金の請求案内はNTTファイナンスから届くのに、”116”に連絡しても、コラボ回線に対してはNTTの回線ではない扱いとなり、コラボ先の会社を通してでないと対応してもらえません。
移行障害の原因になりますので、早めのご確認をお勧めいたします。回線契約を進める前にご相談していただければ、どこの契約か探り当てられる場合があります。
「顧客先からの受付電話番号」、「特定サービス電話番号」など、簡単に変更する事の出来ない番号であっても、あきらめて新たに新規の回線契約の前にスマートな解決方法を考えていきたいと思います。
回線変更にともなう設備の更新
ISDNを利用している場合、既存設備はISDN回線に対応する様に組まれているので、光回線への対応のための設備変更工事が原則必要になります。
PBX(電話交換機)をはじめとする設備更新で検討すべき要素は、「2028年の終息と設備寿命のタイミング」、「故障リスクと更新費用のバランス」の2点です。
光回線に対応する方法は大別すると、新しく電話交換機を新規調達しリプレイスする方法と、そして電話設備の通信回線に係る設備だけを更新する方法とがあります。
ケース1: 電話交換機の他端末類全てを交換する
電話交換機の導入から6年以上経過し、電話交換機の修理交換部品提供が終了している場合は、全機器類の交換を検討する必要があります。
特に電話交換機本体の故障でなくてもデジタル多機能電話・PHSアンテナ等に故障が出ている場合は機器の耐用期間が終わりに近づいています。
使えなくなる前にすべて交換するのがお勧めです。
ケース2: 電話交換機は交換して、その他の機器は使い続ける
ケース1と同様にある程度の経過期間はあるが、端末など不調・不具合が無い場合がこのケースに該当します。
デジタル多機能電話は電話交換機によって使用の可/不可が決まります。
PBX(電話交換機)のモデルは5~10年毎に新製品として世に送り出されています。
現在使用中の電話端末が次回リプレイスされるPBX(電話交換機)で使うことが出来れば、かなりのコストを削減することが出来ます。
また、一般電話やPHS端末はメーカー・機種を問わずに使い続けることが出来ます。
2028年のサービス終了まで待ってから全面リニューアルする方法もあります。
相談いただければ、引き続き端末運用が可能な機種を選定させていただきますので、是非お問い合わせください。
ケース3: 変換器(VOIP)を介して光回線対応にするだけで電話設備の変更は行わない
導入からの経過期間がさほど経っていない、電話機本体や電話機端末を含めて故障や修理履歴が無い、この様な場合には大きくコストを抑えて対応する方法もあります。
電話機本体の更新や全体のリプレイスを行わずに、通信キャリアが取り付けてくれる光回線のONUの末端にVOIPゲートウェイと言う変換装置を取り付けるだけに留めておき、電話交換機や電話機端末はそのまま利用する方法です。
ただし、VOIPケートウェイの選定や設定工事については多くの経験を持った業者の手に委ねる必要があるため、対応できない電話業者も多い点は注意が必要です。
2028年末のISDN回線のサービス終了は大きなインパクトを持っていますが、通信回線だけの工事費、多機能電話機端末の交換費用、電話交換機本体の更新費用、全面リニューアルの費用など、トータルでの最適な方法を模索いたしますのでお気軽にご相談ください。