Wi-Fiのコストパフォーマンス
Wi-Fiシステムを導入する場合、導入について検討する担当者様は、必要なパフォーマンスが得られているのか、そしてその導入にあたっての費用は妥当なものなのかを検討して予算化します。
導入工事の発注稟議の時点でも、事前の予算承認会議の場面でも、算内の妥当性につついての明確な説明が求められます。また事後に得られるべき要件や利便性に不足が無い様にしなければなりません。
無線LANルーター及びそれを含むWi-Fiシステム全体に必要とされる性能を検討するには、それぞれの会社や事業所・職場担当毎に求められるWi-Fiシステムに求める要求事項があり、それの調整作業を進める必要があります。
調整作業は、システムの性能と費用を大枠で掴みながら、各実務者に提供性能で満足が得られるのか、そのシステム導入費用が妥当なのかを鑑みて進めます。
導入担当者は、社内担当者、システム提案業者、稟議決裁者との間に立ち検討準備を進めていきます。また、それぞれの要素を注意深くパフォーマンス自体の妥当性と、そのパフォーマンスに見合ったコストバランスに配慮して適切な判断を行います。
導入目的
無線LANルーター及びそれを含むWi-Fiシステムの導入の理由は、新規事業所の開設に伴う設備導入や既存事業所で行われる「新規システム導入」と、既存システムの更新としての「既設システム更新」に大別できます。
「新規システム導入」の場合はシステムを導入する該当事業所の他に、支店や営業所等離れた地点の組織との連携や管理を行う統合システム管理される事もあるでしょう。
システム全体の一部として組み込まれる場合には、既存システムの拡張と言う扱いに成りますので、既存システムの管理に併せた機種選定をしなければなりません。
全くの新規の場合には、事業所で必要となる事態を推測して、具体的な職務の中でどの様な目的で無線LANシステムを使用するのか、そして有線LANを使用しないで無線LANにする理由を社内共通認識とる事が大切です。
目的を明確にすることで、必要なパフォーマンスが定まる上に、システム導入にかかる費用も削減することが出来るからです。
「既存システム導入」の場合も同様に、目的を明確にしてから進む手順が必要です。
更に今まで使ってきた既存のシステムに対する使用者の不満も十分に聞き取り、システム導入で解決するか否か、また、無線LANシステムの導入で解決すべき課題であるか否かの検討も必要になります。
社内システムの管理者の中には、社内で配線されている有線LANの故障対応に日常的に追われている方もいらっしゃると思います。
繁雑な故障対応業務を減らすために配線故障の原因であるLAN配線自体をオフィスから失くしてしまいたいと考え、無線LANシステムを導入するという目的を持たれている方がいらっしゃいます。
また、異動や組織編制が度々起こる会社や、営業マンのフリーアドレス化に伴ってLAN配線管理を省くことに目的を持たれている方がいらっしゃいます。
この様なケースでは、配線の管理にかかる担当者の稼働コストと管理機器や管理ソフトを使って管理するコストとの差額が、通常業務である作業及び執務効率の上昇、若しくはLAN配線の整理に伴う、事業所内の整備向上に見合うかが決定要素と成ります。
実施要件
システムの適用範囲の形状・環境・面積、そしてクライアント端末の台数、執務で通信する受送信のデータ容量の大きさが基礎的なシステムを選定する要素に成ります。
その要素それぞれから必要な要求事項が定まり実施要件が形成されます。
無線LANルーターを介して送受信する個々のデータの大きさ、各担当者が業務で必要な処理速度とその各クライアント端末の接続がアクセスポイント其々に集中します。
アクセスポイントに紐づくクライアント端末台数は、ルーターの性能を査定し選定する基準となるので、正確に予測しなければなりません。
「同時接続台数」、「通信速度」は無線LANルーターの基礎的な性能で、機器内に組み込まれているプロセッサー処理能力やシングルコア、ダブルコアなどのCPUの構成やメモリー容量、に依存しています。
通信速度、同時接続台数から求められる実施要件が、無線LANルーターの処理性能的な選定の基準に成りますので、正確な査定が大切です。
次にクライアント端末やアクセスポイント等が複数ある場合のシステム管理を検討します。該当事業所の必要なシステム管理要件は何なのか。管理要件をシステム管理者はどの様に遂行するつもりなのか。システム管理者は、管理する内容とその管理手間をシステムにどの程度の時間使うことが出来るのか。更に、事業所が必要とするセキュリティについても同様に実施要件が実現のための手順となります。
導入費構成
無線LANシステムの導入にかかる費用は、初期に行われる「設計」「機器購入」「工事」費用から成るイニシャルコストと「システムライセンス」「管理手間」から構成されるランニングコスト、がある事を念頭に置き検討します。
個々の企業が持っている予算制度は異なりますが、無線LANシステムの導入費用はかなりのインパクトのある金額となります。
イニシャルコスト発生部分を抑える方法としては機器購入費を複数年リース契約に結び変えて金融的に平準化する方法や、機器所有権を顧客に譲渡せずに貸し出しとするレンタル契約もあります。
また、ランニングコストに関しては、管理ソフトウェアの進歩により専門的知識が無くても逐次レビューで確認することが出来、一元的にファームウェアやコード等のシステム更新出来る物が次々に出ています。
管理機器や管理ソフトによる合理化が既存のシステム管理者の負担を減らして、どの程度の管理手間を削減できるか検討に値します。
また、システムライセンス料金は各メーカー・機器によって色々な料金体系があります。これについては、ライセンス料金と管理手間にかかるコストとの関係は、どちらかを減らせばどちらかが増えると言ったような単純な相関関係ではありませんが、反比例的な相関があります。
イニシャルコスト
「要件定義」無線LANシステムを導入予定の顧客のシステム担当は、顧客企業の各部署から様々な要望をくみ上げ、それをまとめる必要があります。
設計者は、顧客のシステム担当者との打ち合わせでまとまった要望を聞き取り要件の確定を行います。
システム設計
要件定義に次いで、システム概要を描き必要な能力を持った購入可能な機器を選択して複数の仮設計を行います。
この時に選択する機器やシステムが、設計者自身が得意な機器の中から検討を進めたりすること。設計会社や工事会社が所属するメーカーとの代理店契約等により特定のメーカーや機種に偏ってしまうことがあります。
設計者が普段扱っている機器であれば、自信をもって推奨することが出来ます。 また、その業者が代理店契約に従い大量の製品取引を行っているような会社は、メーカーからの提供価格をかなり抑えることが出来ます。
ただし、採決する顧客側にしてみれば、客観的にすべてのメーカーやシリーズを俯瞰して顧客要件に最適なシステムを選ぶ選択肢も必要です。
大手システムベンダーでもこの様な傾向はありますので、提案の客観性を保つためにも、設計者の技量、業者の度量を量るためにもメーカーや機器に対して中立的な意見を設計者に求めるべきだと思います。
システム機器購入
システムは、無線LANルーターとコントローラーによって構成されます。セキュリティ機器やソフトコントローラーもありますがいずれの機器・システムも設計時点での選択理由があるので、時点で定まったものです。
価格は商社や代理店契約店舗からの購入となります。購入マージンを削減するためにお客様によっては、自社購入し業者に支給する事もありますそこに注視しましょう。
最近ではアクセスポイントのコントローラー機能をメーカークラウドサーバーで管理するクラウドコントローラーと言うタイプが出てきています。
実物のコントローラー機器は無く、イニシャルでコストになる部分の無い機器です。 ヤマハやフルノで進められているのが、このような方式で、イニシャルコストの低減に貢献します。
工事コスト
イニシャルコストの主な要素は、アクセスポイントの価格と台数、それにコントローラーの価格です。
工事価格は、機器の設置台数や配置位置に左右されますが、機器がいくら高価格に成っても工事コストは変動しません。価格交渉をするうえでは思い出していただきたいと思います。
ランニングコスト
Cisco,Aruba,はシステムライセンス料として、機器購入時にアクセスポイント毎に3年、5年、7年、10年といった単位での複数年契約結ぶことになっています。
コントローラーも同様にライセンス契約があり、管理台数別に結ぶタイプや、管理システムにかかるライセンス料などがあります。
各メーカー・シリーズによって異なる上に、時々変更があるので慎重な対応が求められます。
ライセンスにはメーカーとの保守契約が付いているものと、付いていないものがあります。
Cisco, Aruba に関しては通常導入業者がメーカーの販売代理店となっているので、メーカー保守と言っても業者が実施しますので、実質的には業者との契約だと思って差し支えありません。
また、国産メーカーのアライドテレシスやNEC、ヤマハには、ライセンス料を課金しないシステムがありますので、費用を抑えるのであれば検討の必要があります。
コストサイクル
イニシャルコストとランニングコストとの両面を兼ね備えた部分があります。
Wi-Fiシステムの構成要素である無線LANルーターやシステムコントローラーは、寿命のある機器です。たとえある一定の期間内に機器故障が発生しなくても、使用している機器は順次、「生産中止」、「販売中止」、「サービス停止」と廃盤化が進みます。
保守期間も過ぎて、その延長も拒否された状況で一部のアクセスポイントが故障したときには、メーカーが適切な代替え機種を提供できない場合があります。
部分的に故障したアクセスポイント1台だけを交換するとき、Wi-Fiの規格が異なるとシステム全体の性能を損なってしまう事もありシステムの部分崩壊は非常に困難な状況となります。
システムにも機器と同様に保証されて稼働できる期限があります。 来るべき次期システムの導入費積み立てととらえても良いかもしれませんが、機器寿命と規格寿命から5~6年のサイクルでシステムを更新するコストサイクルの考え方を導入する事をお勧めします。
コスト構造
コストの大まかな分類として、イニシャルコストとランニングコストについては、「設計」「機器購入」「工事」と「システムライセンス」「管理手間」とありますが、これらの工程をすべて自社の社員で行う会社について二種類あります。
メーカーをある程度限定してそこに特化している業者と、オールマイティーに全ての機器を扱う業者です。
メーカーを限定するのは、代理店契約を得て販売しているので、ある意味普通の業者によくあります。全メーカーを社員だけで行えるのは、かなり大きな業者で会社管理コストもかなり大きくなります。
でも、通常業者は、工事会社とシステム会社のどちらかが受注し、其々の得意分野は自社で行い、不得意分野は外注するのが一般的です。
通常社内の従業員で仕事を完結させることが出来れば、費用は易く納まると思いがちですが、潤沢な仕事量の無い会社、特に親会社の市事を専属的にこなしているような業者では、高コスト体質に成っている場合もあります。
ケースによって構造は違いますが、無線LAN工事は電気通信工事と言う分類の建設工事なので、施工体系図と言う重層下請けを一目で確認できる図を作成してもらい、説明を受けることをお勧めいたします。
本来、工事中の安全管理に使うツールなのですが、コスト観点からも抑えると役に立ちそうです。
調査設計費
新規現場の事前調査には、執務スペースの詳細を得る目的があります。既設更新顧客の場合は施工前の状態で、顧客実務者が何処に不具合を感じているのか具体的に掴むことが出ます。
ヒートマップシステムを使用してシュミュレーションを行う等便利なツールによる説明が出来るようにと、丁寧に電波調査を行う事が良くあるようですが、手間がかかりすぎると調査費用が膨らむので、顧客の不満足点や要件抽出に役立つ様に、調査計画書に実施内容に実施理由を付記してもらい説明を受けるようにするとコミュニケーションが深まると思います。
設計はお客様のヒアリングと調査が終わった後に行います。機器選択が要件性能を満足して、価格が見合うものを調整する作業です。システム選定のかなめと言える部分です。
機器購入費
機器購入は商社から購入する場合と、代理店経由で仕入れる場合があります。依頼する業者自身が代理店の場合、既にマージンが業者側にわたっているので、比較的安価に購入することが出来ますが、複数のメーカーの代理店に成っていることは稀なので、「当社の提案はこのメーカーのこれデス!」的な事になるのは仕方のないところです。
メーカー一社であると社内説明に無理が生じてしまう時には、相見積もりをしてくれる他業者にも声掛けする必要があります。
ただ、代理店の良いところは、時々お値打ち商品を提案してくることがあるからです。特定のメーカーに偏っている分、細かいことまで詳しいので、巧く会話をもって価値ある情報を得るのも方法です。
工事費
Wi-Fiのシステム構築に関する工事は、特別な条件が無い限り粗同じ状況を想定して積算します。また機器費や材料費に変化が無い場合には、工事費はほぼ作業員の労務で決まります。
一日当たりの労務員数と労務単価それに管理工数が諸経費として乗ってきますので、労務工数と労務単価の提示を求めると良いでしょう。
実際には機器や材料にもマージンが乗ってきますが、購入ルートが同じであれば、そんなに大きな変動はありません。
機器費や材料費に関して管理するのであれば、労務費同様員数と単価に分けてもらい、”一式”等の項目を細かく分けてもらい説明してもらえれば納得できると思います。
まとめ
Wi-Fi環境への最適な投資額は、実現したい環境や水準によって大きく異なりますし、そのコスト構造も様々です。
どのような設備投資を行うべきかお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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