法人用と家庭用の無線LAN設備の違い
家電量販店には無線LANルーターが1万円を切るモデルから高くても5万円程度までと、手軽に購入できる価格で店頭に並んでいます。こうした家庭用機器は専門の知識が無くてもすぐに稼働するよう工夫されていて、使いやすく大変便利です。
一方で法人向けの無線LAN構築を業者に見積り依頼すると、機器1台をとっても数十万~数百万と非常に大きな価格差があります。
実はこの「差」は、Wi-Fi・無線LANのスペックからは見えない部分で生まれています。
スペックは家庭用の方が高い!?
法人用の無線LANルーターメーカCiscoの最高ブランドCatalyst のフラッグシップモデル9130AXと、家庭用のバッファローWXR-5700AX7Sの通信速度を比べてみましょう。
機器 | 参考価格 | 通信速度(5GHz) | 通信速度(2.4GHz) |
---|---|---|---|
Cisco 9130AX | 250,000円 | 4,803Mbps | 572Mbps |
バッファロー WXR-5700AX7S | 16,300円 | 4,803Mbps | 1,147Mbps |
これほどの価格差があるにも関わらず、製品スペック上の通信速度は差が無いか、むしろ家庭用の方が高くなっています。
会社やブランドの差というわけではなく、同じ会社の製品でも似たようなケースが見られます。以下はNECの法人用と家庭用の無線ルーターの比較です。
機器 | 参考価格 | 通信速度(5GHz) | 通信速度(2.4GHz) |
---|---|---|---|
法人用 Aterm QX-W1130 | 138,000円 | 4,803Mbps | 573Mbps |
家庭用 Aterm WG6000HP | 24,700円 | 4,803Mbps | 1,147Mbps |
実はこの理論値の通信速度は、規格に依存していて製品の良し悪しを判断するにはあまり役に立たない指標になってしまっています
もちろん古い規格を避けるには役立つので全く無意味というわけではないのですが、理論値でのスピード比較比較や表面的な機能だけで選んでしまうと大きな矛盾に陥ってしまう事があるので注意が必要です。
法人用は実測値に違い
家庭用無線LANルーターの話ですが、「最近、我が家では無線LANの接続やサクサク感が無くなって遅くなりました。」と言う方がいらっしゃいました。
話を詳しく聞いてみると、「大学生の二人の娘がweb授業の講義を受けていながら、在宅出勤の私が良く社内外の人とZoomでwebミーティングをしている状況が発生している様です。この時点で既に画像が止まったりする状況であるのにもかかわらず、妻が友達とチャットまでしている状況」。やはり全員で4台以上の端末稼働がするには無理がある様です。
Webでの講義や会議には0.6Mbps(スマホ・タブレットで1対1使用の場合)から1.2Mbps(PCでグループ使用の場合)程度のスピードが必要です。
単純な計算は出来ませんが、3~4人で同時使用するのに必要な通信速度を無線LANルーターが供給していない可能性が有ります。アップロード若しくはダウンロードの何れかが10Mbpsに達しておらず、使用に必要な速度が十分に確保できていない可能性が有ります。
メーカーとしてはその性能をアピールする為にWi-Fi規格に準拠した内容で、理論値を前面に打ち出しています。家庭用でも法人用であっても実際にWi-Fiを使用する環境での実施値が理論値を上回る事は絶対に無く、一般的に実測値は理論値の20~50%程度しか出ません。
無線LANルーターは、演算処理を高速にするコンピューター付きの電波受発信装置で、それを支える設計・CPU能力・メモリー能力等それぞれが、そのまま性能に反映されます。
無線LANルーターには無線LANチップと言われるものが組み込まれています。チップにも用途目的別に色々なものがあり、一般的にはチップが高性能なものほど高価になり、当然無線LANルーター本体価格にも反映されて販売価格は高く設定されます。
法人用のWi-Fiシステムでは速度低下に依る通信故障の様な状態に陥り、業務に支障をきたしてしまう事は避けなければなりません。本体に内蔵されているWi-Fiチップも高性能で接続の安定性が高い設計が成されています。
まとめ
家庭用ルーターを事務所でお使いになっていらっしゃる事業者の方は、速度の問題だけでなく、セキュリティや情報管理の面でも法人用モデルを検討する必要があると思います。
法人用無線LANルーターは、家庭用無線LANルーターとは異なり家電量販店では手に入りません。インターネットでの直販はありますが、法人用の無線LANルーターには業務に見合った性能を発揮するために家庭用途比較すると設定が非常に複雑で、高度な知識と操作が必要です。
お客様がWi-Fiシステムを求め、要望や要件に具体的に答えるためには、設定や取付工事をする業者に依頼するのが一般的です。ルーターの設定を使用環境に合わせて高い性能を発揮確保する為に機器の配置場所や周波数・チャンネルの設計を行い設定します。
法人用無線LANルーター導入をご検討の際は、お気軽にご相談ください。
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