ホテル・宿泊施設のWi-Fi環境整備
キーワード
ホテル宿泊施設Wi-Fi休業期間内装工事
現場の概要
リゾート施設が充実している高級ホテルチェーンで、全国の施設のリニューアルに際してのWi-Fi施設通信工事を行いました。
中でも施工において特徴的だった以下の2現場の施工を例に取り上げます。
・瀬戸内海に面した客室数80程度のリゾート施設で、マリンスポーツ等が楽しめる海に面したホテル
・東北地方の山地にある、スキー・ハイキング・歴史探訪などを目的にした客室数70程度のリゾート型ホテル
課題・要望
このホテルチェーンは会員制の高級リゾートが特徴で、宿泊のお客様は連泊利用者がほとんどです。
リフレッシュ目的の滞在型が多く、合間の時間に執務をされる方もいらっしゃるようで、Wi-Fi環境の整備は必須要件でした。
瀬戸内の方の施設では、4カ所の会議室と改装されたばかりの12個室のブースに仕切られたビジネスセンターがあり、会議室の1つは660㎡・最大250名の利用を想定しているので、それに対応したWi-Fiシステムの構築が求められます。
また、併設のボートハウスとそこから40mほど入江に突き出した桟橋、敷地に300mほど並行したビーチでもWi-Fi接続環境が必要でした。
東北の方の施設では客室・会議室のほか、ゲレンデ中腹にある休憩所や、地下の1,200㎡あるワインセラー・バーにもWi-Fi電波を届かせる必要がありました。
施工のポイント
広範囲でのWi-Fiシステムの構築にはLAN配線が肝心です。大人数が同時にアクセスでき通信速度を維持するには、「外部通信回線」「ルーターとその設定」「アクセスポイントとその設定」「それらを繋ぐネットワークの処理速度」の設備要素で、適切にコーディネイトさせなければなりません。
潮風や低温・降雪など屋外での環境が厳しい現場では、アクセスポイント・ルーターに耐久能力のある機器を選定いたしました。
調査
現地での調査方法は実際に使用するアクセスポイントを想定される取り付位置から受発信させて、模擬電波の応答を端末で計測する形で行います。繋がりやすさを測る数値としては、-55dBを最低基準として調査設計を行いました。
移動しながらスマートフォンを使いますと、複数のWi-Fiアクセスポイントエリアを跨ぐ時にエリアのつなぎ目で途切れることがあります。これを防ぐ為にはある程度相互のWi-Fiアクセスポイントの電波範囲をカバーさせる必要があります。
会議室や会場等でWi-Fi使用機器を利用しながら移動する空間では、シームレスな接続を目指して安全側に立った設計が必要です。
大会議場やワイナリーイベント会場では、利用者の集中が想定されるので、アクセスポイントの選択と配線ルートの分散など、通信量が飽和する様な状態にならないように配慮した設計が必要でした。
設計
瀬戸内の施設では、客室内のアクセスポイントへは既設のLAN配線を流用しましたが、大会場やビジネスセンターなど使用量が大きくなるなる部分がある事を配慮して、基幹部分のLANケーブルはCat6に張り替えとなりました。
また分配や配線延長確保用にカスケードしていた既設のHUB類は新たな規格要求にも耐えられるものでしたが、耐用年数の事を勘案して交換しました。
室内での設備概要は、LANケーブルの配線延長は6.8km、HUBの設置台数は24台、アクセスポイント74台となりました。
屋外ではボートハウスや桟橋を結ぶ配線があり、幹線の光配線敷設距離も1.2km、砂浜全体をカバーする為の配線も必要でしたので、光ファイバー配線の総計は1.5kmに及びました。
その他屋外で工事した設備はLAN配線800m、HUB12台、アクセスポイント13台でエリア全体をカバーできるようになりました。
東北の施設では、客室の改装後に調査をしてみると壁面や扉の断熱材でWi-Fi電波がかなり遮断されて、思いのほかアクセスポイントの台数が必要になってしまうことが判りました。
客室の全面改装が終わった後でしたので、配線を隠蔽できない箇所が複数出てきてしまい、配線後に内装工事を部分的に施さなければならない箇所が出てきました。
改修工事期間は内装中心なので、Wi-Fi工事に充てられる時間は短いのですが、その後の補修工事の期間まで含めて対応するのは工程的に厳しい物でした。
室内での設備概要は、LANケーブルの配線延長は4.7km、HUBの設置台数は18台、アクセスポイント51台となりました。
屋外ではゲレンデの休憩所や山荘迄の配線距離が総延長で1.4kmと長く、LAN配線では対応し難いという事で光ファイバー配線を敷設しました。
屋外工事の設備概要は、LAN配線120m HUB3台アクセスルーター5台で、屋外とは言え棟屋内であった為に比較的規模は小さく収まりました。
機器選定
屋内屋外場所を問わず、ビジネスシーンで使えるレベルのWi-Fiサービスを提供できる事を目標としてシステム選定を行いました。
Wi-Fiシステムの場合システムの中核となるのはアクセスポイントの機能選択です。今回のレベルでは、機種やメーカーを取り交ぜて選ぶことは運用上もシステム上も難しく、保守管理方法も含めて「運用方法」「通信速度」「セキュリティ制限」「実績」からシステムを選択させていただきました。
特に屋外での厳しい環境に適応できる機種を選択するところが、決め手となりました。
両方の施設ともに既設のWi-Fiシステムへのアクセスは、SSIDとパスワードで承認される形になっていましたが、多くのビジネスシーンで求められているようなセキュリティを付加することとなりました。
更に、故障や障害が発生した場合も迅速に対応するために、当社の保守センターで管理するばかりでなく、現場の管理者も自在に現場の状況が把握できるようにされたシステムを持ち歩けるようにする機能を追加しました。
施工時
施設の施工は改装工事期間中の休業のタイミングで行いました。改装中でない場合は、客室の埋まり具合を調整して行うので非常に厳しいものとなりますが、今回は工程会議を設けていただき、他工種(内装工事・電気工事・配管工事)のタイミングと調整しながら進捗する事が出来ました。
Wi-Fiの工事は設備が出来てからでないと敷設や取り付けする事ができません。内装は優先して行われますが、天井や壁面の仕上げをしてしまった後では配線を中に隠蔽する事が出来なくなってしまいますので、配線だけ先行したり後で部分内装する様にしたりと調整が大変でした。
担当者コメント
瀬戸内の施設では、砂浜にWi-Fiアクセスポイントを設置するところが最も印象的でした。学校のキャンパスなどフィールド内にポールを立てて設置する事は経験していましたが、潮風あたる砂浜への設置は初めてだったので、良い経験になりました。
東北の施設では、改装された本館の全客室の壁や扉に断熱のため、Wi-Fiの電波を遮蔽すると思われる素材が入っており、ある意味すばらしいセキュリティ性だと感じると同時に、客室毎の電波環境設定が必要となりました。
調査を踏まえ、現場・環境に即した施工を行いますので、特殊な環境でお困りの場合でもぜひ一度お問合せください。
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